― AutoFormが見る、“Right-First-Time”時代の工程チェーン改革 ―
現在、中国OEMを中心に、BiW(Body in White)開発の在り方そのものが大きく変わり始めています。
背景にあるのは、EV市場における極端な競争環境です。新型車の立ち上げ期間(SOP)は急速に短縮され、従来34か月程度であった車両開発期間は、現在では約23か月、一部では12か月レベルを目標とした開発も始まっています。こうした環境下では、従来型の“試作と修正を繰り返す開発”では対応が難しくなりつつあります。
現在、中国OEMで急速に浸透しているのが、「Right-First-Time」という考え方です。これは、Tryout後の修正を前提とするのではなく、プレス成形から組立・品質検証までを開発初期段階からデジタル上で統合検証し、“最初から量産品質を成立させる”という開発思想です。
従来のBiW開発では、各工程が個別に最適化される傾向がありました。その結果、スプリングバックや組立ばらつきなどの問題が後工程で顕在化し、Tryoutや金型修正を繰り返すケースも少なくありませんでした。
しかし現在、中国OEMでは「工程単独最適」から、「工程チェーン全体最適」への転換が進んでいます。特に近年アメリカでも注目されているのが、成形シミュレーション結果を組立・品質検証へ連携する「バーチャル検査」です。従来はTryout後にしか見えなかった品質課題を、設計初期段階で可視化し、量産前に補正する取り組みが進んでいます。
これは単なるCAE活用ではありません。“Tryoutを減らす”だけでなく、“試作依存そのものを減らす”ための開発改革です。さらに、中国OEMでは、デジタルツインと実際の生産ラインを連携させる動きも加速しています。解析上で予測された要注意領域を、生産ライン上のカメラや実測データでリアルタイム監視し、継続的に補正することで、部品品質や組付け精度を高いレベルで安定化させようとしています。
実際、中国サプライヤでは、従来6回必要だった修正ループを3回へ削減し、不良率43%低減、総コスト30%削減を達成した事例も報告されています。注目すべき点は、中国OEMが単なるソフトウェア導入にとどまらず、開発のあり方そのものを変え始めていることです。
具体的には
• 工程チェーン全体のデータ連携
• ワークフロー標準化
• サプライヤ協調
• デジタル人材育成
といった領域まで踏み込み、開発構造そのものの革新が進んでいます。
つまり現在の競争は、「良い車を作る」だけではなく、「どれだけ早く、少ない試作で、高品質に量産立ち上げできるか」という“開発競争”へ移行し始めています。AutoFormとしても、この変化は単なる解析業務高度化ではなく、「工程チェーン全体で量産品質を成立させる」ためのデジタル化が重要になると考えています。
特に今後は
• 成形~組立間のデータ連携
• スプリングバックを考慮した工程最適化
• バーチャルTryout
• バーチャル品質検証
• グローバル同時開発
など、“工程横断で品質を成立させる仕組み”がますます重要になっていくと考えられます。
現在、中国OEMで進む変化は、中国市場だけの話ではありません。自動車業界全体が今、「試作で品質を確認する時代」から、「デジタル上で品質を成立させる時代」へ移行し始めています。
執筆:オートフォームジャパン株式会社 Sales Manager 坂江 功太郎